第20章 フレームワーク
フレームワークとは?
フレームワークとは、一般的には、特定の問題を解決するための再利用可能な設計構造やコードセットのことを指します。具体的には、一般的なタスクや問題に対する一貫した解決策を提供する、予め構築されたソフトウェアの枠組みのことを指すことが多いです。
JavaScriptフレームワークの特徴
- 構造と整合性: フレームワークは、アプリケーションの基本的な骨組みを提供します。これにより、開発者はアプリケーションの主要な部分に焦点を当てることができます。
- 再利用可能なコード: コンポーネントやライブラリを再利用することで、開発速度を向上させ、コードの一貫性を保つことができます。
- ベストプラクティス: 多くのフレームワークは、特定のデザインパターンやプログラミング手法を採用しており、それらはそのフレームワークのコミュニティでのベストプラクティスとして認識されています。
- コミュニティサポート: 人気のあるJavaScriptフレームワークは、大きなコミュニティを持っており、質問や問題のサポートが豊富にあります。
JavaScriptフレームワークの種類
- UIフレームワーク (例: React, Vue.js): これらのフレームワークは、ユーザーインターフェースの構築を主な目的としています。
- 完全なフレームワーク (例: Angular, Ember.js): これらのフレームワークは、フロントエンド開発のあらゆる側面(UI、ルーティング、状態管理など)をカバーしています。
- バックエンドフレームワーク (例: Node.jsのExpress, Koa): サーバーサイドでの動作に特化しています。
フレームワークの紹介
いくつかの代表的なJavaScriptフレームワークの一部です。他にも多くのフレームワークやライブラリがあり、それぞれのニーズやプロジェクトの要件に応じて選ぶ必要があります。
React
- 歴史: 2013年にFacebookによってリリースされた。
- 特徴
- Virtual DOMを採用。
- JSX (JavaScript XML) に基づくUI構造。
- コンポーネントベースのアーキテクチャ。
- 長所
- 高速なパフォーマンス。
- 大きなコミュニティと豊富なライブラリ。
- Facebookのサポート。
- 短所
- ビューライブラリなので、ルーティングや状態管理など他の機能は外部ライブラリが必要。
- 使い所: シングルページアプリケーション、Webサイト、モバイルアプリ(React Nativeを使用)。
Vue.js
- 歴史: 2014年に元GoogleエンジニアのEvan Youによってリリースされた。
- 特徴
- インクリメンタル採用可能。
- Virtual DOM。
- 単一ファイルコンポーネント。
- 長所
- 軽量で高速。
- 学習曲線が緩やか。
- 豊富なドキュメントとコミュニティ。
- 短所
- 大企業の公式サポートはない(ただし、AlibabaやXiaomiなどが使用)。
- 使い所: ウェブアプリ、SPA、小から中規模のプロジェクト。
Angular (AngularJSから進化)
- 歴史: 2010年にGoogleによって初めてリリースされた。
- 特徴
- MVC (Model-View-Controller) アーキテクチャを採用。
- 2-way data binding(双方向データバインディング)。
- TypeScriptベース。
- 長所
- 大規模アプリケーションの構築に適している。
- 強力なCLI(コマンドラインインターフェース)。
- Googleのサポートがある。
- 短所
- 学習曲線が急。
- パフォーマンスの問題が過去には指摘されていた(現在のバージョンでは大幅に改善)。
- 使い所: 企業向けの大規模なSPA(シングルページアプリケーション)やPWA(プログレッシブウェブアプリ)。
Express.js
- 歴史: 2010年にリリース。
- 特徴
- Node.jsのためのバックエンドフレームワーク。
- ミドルウェアのアーキテクチャ。
- ルーティング、テンプレートエンジンなどの基本的なウェブアプリケーション機能をサポート。
- 長所
- 軽量で柔軟。
- 大きなコミュニティ。
- 短所
- 他のフレームワークと比べて機能が少ない。
- 使い所: REST API, Node.jsベースのウェブアプリ、メン(MongoDB, Express.js, Node.js)スタック。
Ember.js
- 歴史: 2011年にリリース。Yehuda Katzらが中心となって開発。
- 特徴
- すべてを備えたフレームワーク(「batteries-included」アプローチ)。
- Handlebarsテンプレートエンジンを使用。
- 規約上の設定アプローチ。
- 長所
- 設定よりも規約の原則に従うため、迅速な開発。
- 関連ツールやアドオンが豊富。
- 短所
- 重量級。
- 一部のプロジェクトにはオーバーキルと感じられることがある。
- 使い所: 複雑で機能豊富なウェブアプリケーション。
Backbone.js
- 歴史: 2010年にJeremy Ashkenasによってリリース。
- 特徴
- ミニマルなフレームワーク。
- MVC様のパターン。
- RESTful JSONインターフェースをサポート。
- 長所
- 軽量。
- 非常にカスタマイズ可能。
- 短所
- 他のフレームワークと比べて、必要な機能を実装するためのボイラープレートが多い。
- 使い所: シングルページアプリケーション、RESTful APIとの連携が必要な場面。
Svelte
- 歴史: 2016年にRich Harrisによってリリース。
- 特徴
- コンパイル時のフレームワーク。
- JavaScript、HTML、CSSを1つのコンポーネントファイルに組み込む。
- 長所
- ランタイムがないため軽量。
- 書くコードの量が少ない。
- 高速なパフォーマンス。
- 短所
- まだ新しいので、大きなコミュニティや豊富なリソースは少ない。
- 使い所: 軽量なウェブアプリ、パフォーマンスを優先したプロジェクト。
Meteor
- 歴史: 2012年にリリース。
- 特徴
- フルスタックプラットフォーム。
- リアルタイムアプリケーションの構築を強化。
- 長所
- フロントエンドからバックエンドまで一貫性のあるAPI。
- リアルタイムデータ更新が簡単。
- 多数のパッケージが利用可能。
- 短所
- ビルドとデプロイが遅いことがある。
- 大規模アプリケーションではスケーラビリティに課題がある場合がある。
- 使い所: リアルタイム機能を持つウェブおよびモバイルアプリケーション。
Polymer
- 歴史: Googleが開発し、2015年に公開。
- 特徴
- Web Componentsベースのライブラリ。
- カスタム要素の作成と再利用を容易にする。
- 長所
- ネイティブのWeb APIに密接に結びついている。
- 再利用可能なコンポーネントの作成が簡単。
- 短所
- 他のフレームワークと比べるとコミュニティが小さい。
- パフォーマンスの問題が指摘されることがある。
- 使い所: Web Componentsを使用したウェブアプリケーションやウェブサイト
フレームワーク使用の実例
本記事執筆時点での情報であり、未来永劫使用されている事を保証しません。
React
Facebook: ReactはFacebookによって開発され、同社の多くの製品で使用されています。FacebookのメインアプリケーションやInstagramのウェブ版など、大規模なプロジェクトでのReactの実用例として参照できます。
Airbnb: この旅行・宿泊サービスのウェブサイトはReactを使用して構築されており、ユーザー体験の向上やコンポーネントの再利用性を実現しています。
Vue.js
Alibaba: 中国最大のeコマース企業の一つであるAlibabaは、いくつかのプロジェクトでVue.jsを採用しています。
Xiaomi: 中国の大手電子機器メーカーであるXiaomiのいくつかのウェブインターフェースはVue.jsを使用して開発されています。
Angular
Google: AngularはGoogleによって開発されたフレームワークであり、多くのGoogleのサービス(Google AdWordsなど)で使用されています。
Microsoft Office Home: MicrosoftのOffice製品の公式ウェブサイトはAngularを使用して構築されています。
Svelte
The New York Times: 有名な新聞社The New York Timesは、インタラクティブな記事やビジュアルエッセイを作成する際にSvelteを使用しています。
Backbone.js
Trello: このプロジェクト管理ツールは、Backbone.jsを使用して構築されています。特に、UIのインタラクティブな部分やデータの同期に関してBackbone.jsの機能が活用されています。